OppezzoとSchwartz(2014)の研究「Give your ideas some legs: The positive effect of walking on creative thinking」は、創造的な思考に対するウォーキングの効果について検証したものです。
ビジネスの現場では、革新や新しいアイデアが求められることが多く、そのためにどのような方法が有効かを知ることは重要です。本研究は、歩くことがどのように創造性に寄与するかを示し、日常業務に取り入れるべき価値ある知見を提供しています。
研究の背景と目的
創造性は、ビジネスにおいて競争優位性を生む重要な要素です。しかし、創造的なアイデアを生み出すためには、単に頭を使うだけでなく、身体的な活動が役立つことが示唆されています。
OppezzoとSchwartzは、これを科学的に検証し、ウォーキングが創造的思考をどのように促進するかを明らかにすることを目的としました。
研究の方法と主要な結果
研究は4つの実験から構成されています。参加者は「座っている状態」か「歩いている状態」で、創造的なタスクに取り組むことが求められました。
創造的思考は「発散的思考」と「収束的思考」の2つに分けて評価されました。発散的思考は、多くのアイデアを生成する能力を測定するものであり、収束的思考は1つの正解を見つける能力を測るものです。
実験の詳細
実験は4つの段階に分かれて行われ、各段階で異なる条件下での創造性が測定されました。
実験1:
参加者は座っている状態と、トレッドミルを歩いている状態で発散的思考の課題を行いました。結果として、歩いているときの方が大幅に多くのアイデアが生み出されました。
実験2:
座っている状態、屋内でのトレッドミル歩行、屋外でのウォーキングの3つの条件で発散的思考を測定しました。これにより、屋内外の違いに関係なく、歩くこと自体が創造性を高める効果があることが確認されました。
特に、屋外のウォーキングでは自然環境がクリエイティブな思考をさらに促進する可能性が示唆されましたが、主な要因はやはり歩行そのものでした。
実験3:
ウォーキング後に発散的思考の課題に取り組むことで、その効果がどの程度持続するかを測定しました。結果、ウォーキングの後でも創造的な思考力は高いレベルを維持しており、座った状態で即座に行う場合よりも優れていました。
実験4:
収束的思考(単一の正解を見つける思考)に対するウォーキングの効果を測定しました。この結果、収束的思考に関しては、ウォーキングが大きな影響を与えないことが確認されました。これは、ウォーキングが特に発散的思考、すなわち創造的なアイデア生成において有効であることを示しています。
アイデアの質と量
研究では、ウォーキング中に生み出されたアイデアの質と量の両方が向上することが確認されました。特に、アイデアの量においては顕著な増加が見られ、歩行中に生成されたアイデアの60%以上が座った状態でのアイデアよりも創造的と評価されました。
また、歩いた後でも創造的なアイデアが続き、持続的な効果が確認されたことも重要なポイントです。
ビジネスへの応用
この研究の結果は、ビジネスパーソンが日常の業務に取り入れるべき実践的なアドバイスを提供しています。
たとえば、会議やブレインストーミングセッションを歩きながら行うことで、より多くのアイデアを生み出し、革新的な解決策を見つける可能性が高まります。特に、アイデアが停滞していると感じたときには、机を離れて散歩をすることで、思考のブレイクスルーを促すことができるでしょう。
また、ウォーキングはストレスの軽減やリフレッシュにもつながり、業務の効率化にも寄与します。したがって、定期的に歩く時間をスケジュールに組み込むことは、創造性を高めるだけでなく、全体的な業務パフォーマンスの向上にもつながるでしょう。
まとめ
OppezzoとSchwartzの研究は、創造性を向上させるために、シンプルで効果的な方法としてウォーキングを提案しています。ビジネスの世界では、短時間で多くの革新的なアイデアを生み出すことが求められる場面が多く、その際に歩くことを取り入れることで、より良い成果を得ることが期待できます。
これからのビジネス戦略には、身体的な活動と創造的な思考の組み合わせが欠かせない要素となるでしょう。