※行動経済学の考え方を、中学生にもわかるように解説しています。
みんなで協力できるか?── 公共財ゲームと条件付き協力(Conditional Cooperation)
もし、クラスのみんなで“体育祭の垂れ幕を作ろう”ってなったとき、
ある子は毎日放課後に残ってがんばってるのに、別の子は「めんどくさい」って言って何もしない…。
こんなとき、「みんなでやろうって決めたのに、なんでやらへんの?」って思いますよね。
でも、「ほかの人がやってるなら、自分もちゃんとやろう」って気持ちも、自然に出てくるものです。
この章では、そんな「みんながやってたら、自分も協力する」という人間の性質について調べた研究を紹介します。
まわりががんばってたら、自分もがんばろうって思う?──協力のしかたを調べた研究
フィッシュバッハーとゲヒターとフェールの研究では、「公共財ゲーム」という協力をめぐる実験を使いました。
簡単に言うとこんなルールです:
- 何人かでチームになります
- 各自が手持ちのポイントから、「みんなの箱」に出すかどうかを選びます
- 出したポイントは、あとで全員に配られる(出せば全体が得になる)
- でも、自分だけ出さずに、他の人の出した分に“ただ乗り”すればラクに得できる
ここで注目されたのは、「自分がどれくらい出すかを、他の人の出し方を見て決める人が多かった」ということ。
つまり、
「みんなが出してるなら、自分も出す」
「みんなが出してないなら、自分も出さない」
という“条件付きの協力”のパターンが多かったのです。
みんなで協力するには、ズルした人に“ちゃんと注意する仕組み”が必要なんじゃない?──協力とおしおきの実験
フェールとゲヒターの研究では、同じ公共財ゲームに「罰を与える選択肢」を追加しました。
- 協力しなかった人に、自分のポイントを使って罰を与えることができる
すると、なんと協力のレベルがぐんと上がったのです
つまり、「ズルすると罰がある」というルールがあると、人はより協力的になるという結果が出ました。
教室での例で考えてみよう
- ゴミ拾いの係をしているとき、他の人もやってたら自分もがんばれる
- でも、みんながさぼってたら「自分だけやっても…」って気になる
- 先生や友達が「ありがとう」と言ってくれると、「来週もやろう」と思える
- さらに、「○○係は週に1回交代」などのルールがあると、“ズルしづらい”空気ができる
- みんなでルールを決めたり、役割分担が見えるようにしておくと、公平感が生まれやすい
→ これはまさに、「まわりの行動に合わせて協力する」=条件付き協力の姿です。
協力を長続きさせるには?
この2つの研究からわかったことは:
- 人は、自分ひとりで動くより、まわりの行動を見て協力するかを決める
- 協力がちゃんと評価され、ズルが見逃されないようなしくみがあると、協力が続きやすくなる
つまり、「みんなで協力したくなる空気」をつくるには、
- 協力してる人をほめること
- サボってる人に優しく声をかけること
- みんなでルールを決めて守ること
がとても大事なんですね。
まとめ
- 人は「みんながやってるなら自分もやる」と考えることが多い(条件付き協力)
- 協力を守るためには、「ズルには罰がある」しくみが有効
- 教室やクラブでも、“協力したくなる雰囲気”をつくることが大切