Leadership

学生向けリーダーシップ開発コンテンツ例

次世代を担う学生のリーダーシップ開発プログラムのコンテンツのディスカッション教材です。

この教材をもとに、

  • リーダーシップとはどのようなものなのか(例えば、桃太郎の良かったところは?)
  • メンバーシップとはどのようなものなのか(例えば、犬や猿はどうすべきだったか?)
  • チームとはどのようなものなのか(例えば、チーム運営についてのヒントは?)

などといった点についてディスカッションします。

桃太郎のリーダーシップ~sample~

桃太郎は、犬や猿たちをお供に連れて鬼ヶ島に向かっていました。
責任感が強い桃太郎は、このメンバーを一匹たりとも失うことなく、冒険を終えたいと強く願っていました。

というのも、以前に桃太郎と行動を共にしていた鹿が、つり橋から転落して命を落としてしまったという事件があったからです。

本人の不注意だったとはいえ、桃太郎はリーダーとしての自覚を新たにし、メンバーの行動管理を徹底しようと心に決めていました。

道中は一列縦隊を基本とし、リーダーである桃太郎が先頭に立ちます。
歩きながら桃太郎はたびたび後ろを振り返ります。

「そこ!隊列が乱れているぞ!」

お調子者の猿は、すぐに列を外れて花を摘んだり、果物をとって食べながら歩いたりするのです。

「おい猿よ。いま鬼に襲われたら我々はひとたまりもないぞ。わかっているのか!」

叱られた猿はしゅんとしています。

それだけではありません。
鬼との戦闘中も、メンバーの行動についてあれやこれやと口出ししてくるのです。

確かに、全員が無事に戦いを終えるためには、桃太郎の言い分はもっともだったかもしれません。しかし、裁量を全く与えられず、窮屈な思いを強いられているメンバーは、桃太郎のことを快く思っていませんでした。

きび団子の管理についても、いちいち口うるさく指示を出します。
「そうじゃない。先入先出法だ!ちゃんと賞味期限はチェックしたのか?えーい、どけ、おれがやる!」

ある日の午後。
桃太郎は所用があり、ひと時パーティーを抜けましたが、用事が早く終わったため予定よりも早く戻りました。

その時メンバーは、日ごろの桃太郎の強権体制をグチっていました。桃太郎は偶然そんな愚痴を聞いてしまったのです。

「うちの大将には困ったもんだ。何かにつけてガミガミ ガミガミ。もっと自由にやらせてもらえないかねぇ」
と、犬がため息をつくと。

「僕なんか一度も褒められたことがないよ。いつも叱られてばっかりでさぁ」
猿も力なく笑います。

桃太郎は、自分が大きな勘違いをしていたことに気がつきました。
そう、自分が押し付けていたのは組織の論理であって、最前線で戦っているメンバーにはまた別の、いわば現場の論理があったのです。
「智に働けば角が立つ、か…」

昨晩訪れた居酒屋のトイレに貼ってあった格言

『物事に取りかかるべき一番早い時は、あなたが「遅かった」と感じた瞬間である。』

この言葉が現実感を伴って桃太郎の胸に迫りました。

すぐに桃太郎は管理体制をガラッと変えました。

コーチングの本を読み漁り、傾聴と承認を基本スタイルとしてメンバーに接するようにしたのです。

猿が食べ歩きをしていても、ぐっとこらえて叱らず、「おれにも分けてくれよ~(笑)」などと言って場を和ませたりしました。

目に見えて、パーティーの風紀が乱れ始めていました。

ある日の戦闘中、猿がふざけた行動をとり、結果としてパーティーは敗走しました。
あわや全滅というところでしたが、ここでも桃太郎、ぐっとこらえて注意をしませんでした。

口うるさくして、またメンバーに嫌われるのを避けたかったのかもしれません。

その翌日、シリアスさを失ってテレっとしていた猿は、ふいに鬼の一撃を急所に受け、命を落としました。

その夜、桃太郎は気づきました。

「そうか、ゆるめるだけではダメなんだ。メンバーに共感や同調ばかりしていても目標には近づけない。大切なのは、そのバランスか。
情に掉させば流される、とはよく言ったものだ」

猿を失ってしまった桃太郎ですが、メンバーに自らの未熟さを詫び、これからは立派なリーダーになることを皆の前で誓いました。

そして時が経ち…
桃太郎一行は、鬼ヶ島の中心地まであと少しというところまで歩を進めていました。

あれから桃太郎は、自分の手帳の一番目立つ場所に『タスク』『ヒューマン』と大きく記し、課題と人間のどちらに対しても常に誠実に対応しようと心掛けていました。

一時期バラバラになりかけていたチームは、その後結束が強まり、今までで一番のまとまりを持っています。猿の忘れ形見も立派に成長し、今では桃太郎パーティーで大事なポジションを任されるに至っていました。

「さあみんな、いよいよだな」
桃太郎を見つめるメンバーの目には、彼への信頼がはっきりと浮かんでいました。
~おしまい~

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