※行動経済学の考え方を、中学生にもわかるように解説しています。
「未来の自分」は信用したらダメ?── 先のことを後回しにしてしまう脳のクセ
「あとでやるから大丈夫」「明日からがんばる」
そんなふうに言っていたのに、結局何もしないまま時間が過ぎてしまったこと、ありませんか?
これは“やる気がない”のではなく、人の脳にそもそもある“くせ”のせいかもしれません。
実は人は、「今の楽しさ」にとても弱く、「未来のための行動」はどうしても後回しにしがちなのです。
すぐのごほうびに負ける理由
ジョージ・エインズリー(George Ainslie/エインズリー)は、「なぜ人は目の前の楽しさに負けてしまうのか」を研究しました。
たとえば、「今すぐゲームする」か「1週間後にごほうびをもらうか」という選択で、人は「今」のほうを選びがちです。
エインズリーはこのくせを「ハイパーボリック割引」と呼び、「ごほうび」は時間が近づくほどにどんどん強く感じられてしまう、と説明しました。
彼は、「人の中には複数の“自分”がいて、それぞれが目の前のごほうびを取り合っているようなものだ」とも語りました。
つまり、「今日はやる気あるけど、明日はまたサボるかも…」というように、日によって気持ちが変わってしまうのは自然なことなのです。
「あとでやる」はなぜ失敗する?
マシュー・ラビン(Matthew Rabin/ラビン)とテッド・オドノヒュー(Ted O’Donoghue/オドノヒュー)は、「Doing It Now or Later」という論文で、先延ばしのくせをくわしく説明しました。
この研究では、人は「未来の自分はちゃんとやるだろう」と思ってスケジュールを立てるけれど、いざその日になると「今日はちょっと疲れてるからまた今度にしよう」と先延ばししてしまう、と指摘しています。
これは、計画を立てるときには「自分は理想の行動をとれる」と思ってしまうことが原因です。
でも、その時になってみると、今のしんどさが勝ってしまうのです。
未来の自分を信用しすぎないこと
こうした研究からわかるのは、「未来の自分に期待しすぎないほうがいい」ということです。
人は、「明日からやる」と思っても、実際にはやらないことが多い。
だからこそ、「今のうちに動く」「今のうちに仕組みを作る」ことが、行動を続けるカギになります。
「あとでやる」ではなく、「今日、やる時間を決める」「友達と約束しておく」「やったあとのごほうびを決める」など、今の自分にできることを増やしておくことが大事なのです。
学校や家でできる工夫
- 宿題をやる時間を決めて、終わったらお気に入りの音楽を聴く
- テスト勉強を「〇時からやる」友達と約束する
- スマホを勉強中だけ別の場所に置いておく
こうした工夫をするだけで、「やる気が出たときにやろう」ではなく、「やる環境を先に整えておく」ことができます。
まとめ
- 人は「今の楽しさ」に流されやすく、「未来のこと」は後回しにしがち
- 「あとでやる」はうまくいかない。未来の自分はあてにしすぎない
- 今のうちにできる工夫をしておくことが、行動を続けるコツ